HIV陽性と言われたらどうする?
再検査・確定診断・受診先を解説

HIV検査で「陽性」と言われると、「本当にHIVに感染しているのか」「これからどうすればよいのか」と強い不安を感じる方も多いでしょう。しかし、最初に受けた検査がスクリーニング検査である場合、陽性という結果だけでHIV感染が確定したわけではありません。偽陽性の可能性もあるため、確認検査やHIV核酸増幅検査などによる確定診断が必要です。

まずは、受けた検査の種類と結果の判定区分を確認し、自己判断で結論を出さずに医療機関へ相談することが大切です。感染が確定した場合でも、現在は適切な治療を継続することで、免疫機能を維持しながら長期的に健康な生活を送ることが期待できます。

この記事では、HIV陽性と言われたときに確認すべきこと、再検査・確定診断の流れ、偽陽性の可能性、受診すべき医療機関について分かりやすく解説します。

目次

HIV陽性と言われても、スクリーニング検査だけでは感染確定とは限りません

HIVのスクリーニング検査で「陽性」または「要確認」と判定されても、その時点でHIV感染が確定したわけではありません。スクリーニング検査は感染者を見逃さないよう感度を重視しているため、実際には感染していない人が陽性になる「偽陽性」が一定数生じます。まずは結果だけで感染したと決めつけず、確認検査を受けることが重要です。

スクリーニング検査が陽性だった場合は、HIV-1・HIV-2に対する抗体を詳しく調べる検査や、血液中のHIV遺伝子を検出する核酸増幅検査(NAT)などを組み合わせて、感染の有無を確認します。特に感染初期では、抗体の量が十分に増えておらず、検査結果が一致しないこともあるため、医療機関で検査時期や感染機会を確認しながら判断する必要があります。

したがって、HIV陽性と言われた場合に最初に行うべきことは、パニックになったり自己判断で結論を出したりすることではなく、検査を受けた施設へ連絡し、速やかに確認検査へ進むことです。確定するまではコンドームを使用しない性行為や献血を控えつつ、通常の会話や食事、入浴などの日常生活まで制限する必要はありません。

HIV陽性と言われたら
まず確認すること

陽性となったのは迅速検査・スクリーニング検査か確認検査か

まず、どの種類の検査で陽性になったのかを確認します。即日結果が分かる迅速検査の多くは、感染の可能性がある人を拾い上げるためのスクリーニング検査です。この段階の陽性は「HIVに反応する所見があった」という意味であり、感染確定ではありません。検査名や検査方法を結果用紙で確認しましょう。

医療機関や保健所によっても異なりますが、迅速検査は指先から採血を行い、検査キットに1滴付けて検査します。反対にスクリーニング検査では静脈採血を行い、日本国内では現在、第4世代抗原抗体検査という方法で検査をするのが一般的です。

確認検査まで実施されているか

スクリーニング検査で陽性となった後は、別の原理を用いた確認検査によってHIV感染の有無を判断します。結果を受け取った際には、確認検査まで終了しているのか、現在検査中なのか、これから追加採血が必要なのかを確認してください。スクリーニング陽性だけでは、最終的な診断を確定できません

「陽性」「要確認」「判定保留」のどれなのか

結果用紙に記載された「陽性」が、スクリーニング検査の陽性なのか、確認検査後の確定結果なのかを確認することが重要です。「要確認」や「判定保留」は、現時点では感染の有無を判断できず、追加の確認検査や再採血が必要な状態を示すことがあります。表現の意味は施設によって異なるため、自己判断せず説明を受けましょう。

結果の表現一般的な意味次に必要な対応
陰性今回の検査では感染を示す反応なし検査時期が早い場合は再検査
陽性・要確認スクリーニング検査で反応あり確認検査が必要
判定保留現時点で確定できない医師の指示に従い追加検査
確認検査で陽性HIV感染が確定HIV診療を行う専門医療機関へ

検査を受けた医療機関へ連絡する

結果の意味が分からない場合や、スクリーニング検査のみで陽性となった場合は、検査を受けた医療機関や検査施設へ早めに連絡してください。確認検査の実施状況、結果が出る時期、追加採血の必要性、専門医療機関への紹介について案内を受けます。別の簡易検査を自己判断で繰り返すのではなく、決められた手順で確認することが大切です。

HIV検査で偽陽性になる理由

迅速検査やスクリーニング検査では本当の感染がなくても陽性反応が出ることがある

HIV迅速検査で陽性反応が出ても、その結果だけでHIV感染が確定するわけではありません。迅速検査は、感染の可能性がある人を短時間で拾い上げるためのスクリーニング検査の1つです。実際には感染していなくても、検査試薬の非特異的な反応などによって陽性を示す「偽陽性」が生じることがあります。そのため、迅速検査の陽性は「感染確定」ではなく、「確認検査が必要な反応」と考えます。

「陽性」=全ての例で「感染」ではありません。

検査の精度が高くても、偽陽性を完全にゼロにはできません。

例えば、仮に感度99.9%、特異度99.8%の検査を、HIV感染者の割合が0.1%の集団1万人に行ったとします。感染者は約10人で、そのほぼ全員が陽性になります。一方、感染していない9,990人のうち0.2%、約20人にも陽性反応が出る計算です。この場合、陽性になった約30人のうち、本当に感染している人は約10人となり、陽性者に占める真の陽性者は約33%です。

感度・特異度とは?

感度とは、実際にHIVへ感染している人を、検査で正しく「陽性」と判定できる割合です。例えば、HIVへ感染している100人に対して感度99%の検査を行うと、平均的には99人を陽性として見つけられますが、1人は陰性と判定される可能性があります。この見逃された結果が「偽陰性」です。感度が高い検査ほど感染者を拾い上げやすいため、最初のスクリーニング検査では、感染の可能性をできるだけ見逃さないことが重視されます。

一方、特異度とは、実際にはHIVへ感染していない人を、正しく「陰性」と判定できる割合です。例えば、感染していない1,000人に特異度99%の検査を行うと、平均的には990人が正しく陰性になりますが、残りの10人は感染していないにもかかわらず陽性になる可能性があります。これが「偽陽性」です。特異度が高いほど、感染していない人を誤って陽性とするケースが少なくなります。

たとえるなら、HIVのスクリーニング検査は、空港の保安検査で少しでも疑わしい荷物を止めるようなものです。危険物を見逃さないために広く反応する一方、安全な荷物まで止めることがあります。そこで、止められた荷物を詳しく調べる二次検査に当たるのが確認検査です。HIV検査でも、最初の検査で陽性反応が出た場合は、別の方法による検査を追加し、偽陽性を除外したうえで感染の有無を判断します。

したがって、感度や特異度が99%以上あることと、「陽性なら99%の確率で感染している」ことは同じではありません。 陽性結果が本当の感染を示す割合は、検査の感度・特異度に加えて、検査を受けた集団にHIV感染者がどの程度含まれているかによっても変わります。スクリーニング検査の陽性だけで感染を確定せず、確認検査へ進む必要があるのはこのためです。

これは「検査の精度が低い」という意味ではありません。感染していない人の数が非常に多い集団では、ごくわずかな偽陽性率であっても、偽陽性者の実数が真の陽性者を上回ることがあるためです。なお、上記は仕組みを説明するための仮定であり、特定の迅速検査キットや個人の感染確率を示す数字ではありません。迅速検査で陽性となった場合は、同じ簡易検査を自己判断で繰り返すのではなく、医療機関で確認検査へ進むことが重要です。

陽性者に占める真の陽性率は、検査を受ける集団によって異なる

検査で陽性となった人のうち、実際に感染している人の割合を「陽性的中率」といいます。陽性的中率は検査そのものの感度・特異度だけでは決まらず、検査を受ける集団にHIV感染者がどの程度含まれているかによって変化します。一般的な健康診断のように感染者が少ない集団では、陽性者に占める偽陽性の割合が相対的に高くなります。一方、HIV陽性のパートナーがいる人など、感染者の割合が高い集団では、陽性反応が真の感染を示す割合も高くなります。

先ほどと同じく、感度99.9%、特異度99.8%の検査を仮定します。感染者の割合が0.1%の集団では陽性的中率は約33%ですが、感染者の割合が1%なら約83%、10%なら約98%になります。つまり、まったく同じ検査結果であっても、どのような集団を対象に検査したかによって、陽性反応が本当の感染を示す確率は大きく変わります

ただし、集団の感染者割合から、個人の感染確率をそのまま算出することはできません。実際の判断には、受けた検査の種類、感染機会からの期間、確認検査の結果などを総合する必要があります。

これが、迅速検査やスクリーニング検査の陽性だけで確定診断を行わず、確認検査を実施する大きな理由です。

症状の有無だけでは真の陽性か判断できない

HIV感染の初期には、発熱、喉の痛み、倦怠感、筋肉痛、発疹などが現れることがありますが、症状がまったく出ない人もいます。また、これらは風邪やほかの感染症でもみられるため、症状があるから真の陽性、症状がないから偽陽性とは判断できません。感染の有無は、症状ではなく所定の確認検査によって判断します。

HIVの確定診断までに
行われる検査

HIV抗原・抗体検査によるスクリーニング

最初に行われるのが、血液中のHIV-1 p24抗原とHIV-1・HIV-2に対する抗体を調べるスクリーニング検査です。現在は、抗原と抗体を同時に検出する第4世代検査が一般的で、抗体だけを調べる検査よりも感染の早い段階から反応する可能性があります。

ただし、スクリーニング検査は感染者を見逃さないことを重視した検査であり、感染していない人でも非特異反応によって陽性になることがあります。そのため、結果が「陽性」または「判定保留」であっても、この時点ではHIV感染が確定したわけではありません。必ず確認検査へ進みます。

HIV-1/2抗体確認検査

スクリーニング検査で陽性または判定保留となった場合は、HIVに特有の複数の抗体が本当に存在するかを詳しく調べます。現在は、HIV-1抗体とHIV-2抗体を同時に検出し、どちらに対する反応かを判別する確認用のイムノクロマト法が用いられます。

この検査でHIV-1またはHIV-2に特徴的な抗体反応が確認されれば、感染を強く裏付ける結果となります。一方、感染直後は抗体がまだ十分に作られておらず、実際に感染していても確認検査が陰性または判定保留になることがあるため、核酸増幅検査の結果と組み合わせて判断します。

HIV核酸増幅検査(NAT)

核酸増幅検査(NAT)は、抗体ではなく、血液中に存在するHIV-1の遺伝子であるRNAを直接検出する検査です。感染してから間もない時期は、抗体がまだ確認できなくても血液中のウイルス量が多いことがあり、NATによって急性期のHIV-1感染を発見できる場合があります。

日本の診療ガイドラインでは、スクリーニング検査が陽性となった場合、HIV-1/2抗体確認検査とHIV-1 NATを組み合わせて診断することが推奨されています。ただし、NATだけで感染の有無を判断するのではなく、スクリーニング検査、抗体確認検査、感染機会からの期間、PrEP・PEPの使用状況などを含めて総合的に評価します。

確認検査が陰性・判定保留となった場合の対応

抗体確認検査が陰性または判定保留でも、直ちに「感染していない」とは判断できません。感染直後は抗体が十分に増えていないため、スクリーニング検査では抗原を捉えて陽性となる一方、抗体確認検査ではまだ反応しないことがあるからです。この場合、HIV-1 NATが陽性であれば急性HIV-1感染が強く疑われ、後日、抗体の陽性化を再検査で確認します。

NATも陰性であれば、スクリーニング検査の偽陽性である可能性があります。ただし、最近の感染機会がある場合や感染リスクを否定できない場合は、ウインドウ期を考慮し、通常は2週間後以降を目安にスクリーニング検査や確認検査を再度行います。結果が確定するまでは、自己判断で「感染している」「感染していない」と決めつけず、検査を行った医療機関の指示に従うことが重要です。

HIV陽性と言われた後の流れ

STEP
スクリーニング陽性なら確認検査を受ける

HIV-1/2抗体確認検査もしくはHIV-1 NAT検査で、HIVの感染を確認します

STEP
感染が確定したら紹介状を受け取る

感染時にはHIV治療まで行う事の出来る医療機関への紹介状を貰います

STEP
HIV診療を行う専門医療機関を受診する

改めて現在の体調や体内の状態を確認します

STEP
血液検査で現在の状態を確認する

具体的なHIVのウイルス量や合併症の有無、AIDS発症について精査します

STEP
医師と相談して抗HIV治療を開始する

服薬回数、通院頻度、治療の中身など、生活に関わる事まで確認していきます

HIV感染が確定した場合は
どこを受診する?

エイズ診療拠点病院・HIV専門外来を受診する

HIV感染が確認された場合は、HIV診療の経験と体制を備えたエイズ治療拠点病院やHIV専門外来を受診します。全国の受診先は、厚生労働行政推進調査事業の「エイズ治療拠点病院診療案内」から地域別に検索できます。拠点病院では、医師・看護師・薬剤師・医療ソーシャルワーカーなどが連携し、血液検査、抗HIV治療、服薬支援、医療費制度の相談などに対応します。結果を放置せず、できるだけ早く受診先を決めることが大切です。

紹介状がなくても受診できるか確認する

紹介状がなくても受診できるかどうかは、医療機関によって異なります。紹介状が必要な病院や、事前予約・電話相談を求める病院もあるため、受診前に公式サイトや電話で「HIV感染が確認されていること」「確認検査の結果があること」を伝え、初診の受付方法を確認しましょう。紹介状がない場合の追加費用や受診条件も施設ごとに異なります。検査結果、本人確認書類、健康保険証など、必要な持ち物や予約変更の方法まで確認しておくと、受診当日の手続きがスムーズです。

受診先が分からない場合は検査を受けた施設へ相談する

受診先が分からない場合は、まずHIV検査や確認検査を受けた医療機関・保健所へ相談してください。感染確定後は、適切な時期に専門医療へつなぐことが重要であり、検査施設から地域のエイズ治療拠点病院やHIV専門外来を案内してもらえる場合があります。匿名検査を受けた場合も、今後の受診方法や利用できる相談窓口について説明を受けましょう。通院を希望する地域、曜日、時間帯などを担当者へ伝えると、条件に合う医療機関を探しやすくなります。

自宅や職場から通院しやすい医療機関を選ぶ

HIV感染症は、治療開始後も定期的な診察や血液検査、薬の処方・受け取りが必要になるため、無理なく通院を続けられる医療機関を選ぶことが大切です。自宅や職場からの距離、診療曜日、予約時間、交通手段、通院にかかる時間などを確認しましょう。さらに、プライバシーへの配慮、医療費や福祉制度の相談体制、合併症に対応できる診療科の有無も選択のポイントです。生活への負担が少なく、長期的に治療を継続しやすい受診先を選びましょう。

一生をかけて長く付き合わなければならない病気ですので、通院中断しないための通いやすさも重要です。

HIV陽性が確定した後に
行われる主な検査

CD4陽性Tリンパ球数

CD4陽性Tリンパ球は、細菌やウイルスなどから体を守る免疫機能の中心となる細胞です。その数を測定し、HIVによって免疫力がどの程度低下しているかを確認します。数値が低いほど日和見感染症を発症する危険性が高くなるため、合併症の検査や予防薬が必要かを判断する重要な指標です。現在はCD4数にかかわらず早期の抗HIV治療が推奨されますが、治療後の免疫機能の回復を確認するためにも定期的に測定します。

敵によってどのくらい身体がダメージを受けているかを計測します。

HIV RNA量(ウイルス量)

HIV RNA量は、血液中に存在するHIVの量を「ウイルス量」として測定する検査です。治療前の基準値を確認するとともに、HIVが体内でどの程度活発に増殖しているかを把握します。抗HIV治療の開始後は、ウイルス量が十分に低下し、検出限界未満に抑えられているかを確認する最も重要な指標です。定期的に測定し、数値が再上昇した場合は、薬の飲み忘れ、薬剤耐性、薬物相互作用などの原因を検討します。

敵の数自体がどれくらいいるかを計測します。

薬剤耐性検査

薬剤耐性検査では、感染しているHIVの遺伝子を調べ、特定の抗HIV薬が効きにくくなる耐性変異の有無を確認します。治療歴がなくても、耐性をもつHIVに感染している可能性があるため、原則として治療開始前に行います。検査結果は、十分な効果が期待できる薬の組み合わせを選び、治療開始後のウイルス学的失敗を防ぐために用いられます。特にPrEP・PEPの使用中や使用後に感染した場合は、治療薬の選択に耐性検査の結果が重要となります。

肝炎・梅毒・結核などの合併感染の検査

HIV感染が確定した後は、B型・C型肝炎、梅毒、結核などの合併感染がないかを確認します。これらは自覚症状が乏しい場合もありますが、合併感染の有無によって、抗HIV薬の選び方、各感染症の治療内容、治療を開始する順序が変わることがあります。特に免疫機能が低下している場合は、潜在性結核や日和見感染症の評価も重要です。早期に発見することで、重症化や薬物相互作用、治療開始後の免疫再構築症候群などのリスクに備えられます。

肝機能・腎機能など治療開始前の検査

抗HIV治療を安全に開始するため、肝機能・腎機能、血球数、血糖、脂質、尿検査などで治療前の全身状態を確認します。抗HIV薬は種類によって、肝臓や腎臓への影響、併用薬との相互作用、使用時の注意点が異なるため、検査結果は薬剤の選択や用量調整の参考になります。治療前の数値を記録しておくことで、開始後に異常が生じた際も、薬の副作用、HIVや合併症による変化を比較しやすくなります。検査項目は年齢や持病に応じて追加されます。

HIVは治療できる?
現在の治療と今後の生活

抗HIV薬でウイルスの増殖を抑える

現在のHIV治療では、複数の作用をもつ抗HIV薬を組み合わせ、体内でのウイルス増殖を抑えます。HIVを完全に体外へ排除する治療ではありませんが、ウイルス量を低く保つことで免疫機能の低下やエイズ発症を防ぎ、健康状態を長く維持できます。治療効果は、定期的なHIV RNA量やCD4陽性Tリンパ球数の検査で確認します。

HIV陽性とエイズ発症は同じ意味ではない

HIV陽性は「HIVに感染している状態」を指し、エイズ発症と同じ意味ではありません。HIVによって免疫機能が大きく低下し、定められた日和見感染症や悪性腫瘍などを発症した段階でエイズと診断されます。HIV陽性と分かっただけで、直ちにエイズと診断されるわけではありません。早期に適切な治療を始めて継続すれば、免疫低下を抑え、エイズ発症を予防することが期待できます。

「HIV」はウイルスの名前、「AIDS」はHIVによって引き起こされる状態のことです。

ウイルス量が検出限界未満なら性行為による感染を防げる

抗HIV治療を継続し、血液中のウイルス量が検出限界未満の状態を安定して維持できている場合、性行為によってパートナーへHIVを感染させることはありません。これをU=Uと呼びます。医師の指示に沿って治療と定期検査を続け、ウイルス量が抑えられていることを確認する必要があります。ただし、ほかの性感染症や妊娠を防ぐ効果はないため、必要に応じてコンドームや性感染症検査も検討します。

自己判断で治療を中断しないことが重要

抗HIV薬は、決められた方法で継続して使用することが重要です。自己判断で服薬を中断したり、飲み忘れが続いたりすると、ウイルス量が再び増加し、免疫機能が低下する可能性があります。薬剤耐性が生じると、使用できる薬の選択肢が狭まることもあります。副作用、飲みにくさ、生活時間とのずれなどがある場合も、自分で中止せず主治医へ相談してください。薬の変更や服薬方法の調整を検討できます。

当院でHIV検査が
陽性・要確認となった場合の対応

迅速検査で陽性となった場合は静脈採血によるスクリーニング検査を行います

迅速検査で「陽性・要確認」となっても、その時点でHIV感染が確定したわけではありません。偽陽性の可能性もあるため、当院では静脈採血を行い、HIV抗原・抗体検査による追加のスクリーニング検査を実施します。

陽性が確認された場合は専門医療機関へご案内します

スクリーニング検査によってHIV感染が疑われる場合は、HIV診療を行うエイズ治療拠点病院や専門医療機関をご案内します。専門医療機関では、CD4陽性Tリンパ球数やウイルス量、薬剤耐性などを調べ、現在の状態に適した抗HIV治療を検討します。受診方法や紹介状についても当院からご説明し、必要な医療へ円滑につながれるよう対応します。

梅毒・淋菌・クラミジアなどの同時検査も可能

HIVと同じ感染機会で、梅毒・淋菌・クラミジアなど、ほかの性感染症にも同時に感染している可能性があります。当院では、ご希望や感染機会に応じて、梅毒の血液検査や、尿・腟・咽頭・直腸などを対象とした淋菌・クラミジア検査を同時に受けられます。症状がない感染もあるため、心配な行為がある場合は必要な検査を医師と相談しましょう。

HIV陽性と言われた場合に
よくある質問

HIV陽性と言われたら、感染が確定したということですか?

受けた検査が「スクリーニング検査」だった場合、陽性でもHIV感染が確定したとは限りません。偽陽性の可能性があるため、抗体確認検査やHIV-1核酸増幅検査などの確認検査が必要です。まずは、スクリーニング陽性なのか、確認検査まで行って感染が確定しているのかを確認しましょう。

HIV陽性になると、すぐにエイズを発症するのですか?

HIV感染とエイズは同じ意味ではありません。HIVに感染した人が、免疫力の低下によって特定の日和見感染症や悪性腫瘍などを発症した場合に「エイズ」と診断されます。HIV感染が早期に分かり、適切な治療を開始すれば、エイズの発症を予防することができます。

HIV感染が確定したら、すぐに病院を受診する必要がありますか?

できるだけ早く、エイズ診療拠点病院やHIV専門外来を受診してください。初診では、HIVのウイルス量やCD4陽性リンパ球数、肝機能・腎機能、ほかの感染症の有無などを確認し、治療方針を決めます。体調に問題がなくても、自己判断で受診を先延ばしにしないことが大切です。

HIVは治りますか?一生薬を飲み続けるのでしょうか?

現在の治療では、体内からHIVを完全に排除することは困難です。そのため、基本的には抗HIV薬による治療を継続します。ただし、適切に服薬することでウイルスの増殖を強力に抑え、免疫力を保ちながら長期的に健康な生活を送ることが可能です。薬を中断するとウイルスが再び増えるため、自己判断で中止してはいけません。

治療を受ければ、パートナーにHIVをうつさなくなりますか?

抗HIV治療を継続し、血液中のウイルス量が検出限界未満に維持されている場合、性行為によってHIVが感染することはないとされています。これを「U=U」と呼びます。ただし、治療開始直後やウイルス量が十分に抑えられているか確認できていない時期は、コンドームなどの予防が必要です。

家族との食事や入浴、同じトイレの使用で感染しますか?

通常の日常生活でHIVが感染することはありません。握手やハグ、食器の共用、回し飲み、入浴、トイレ、洗濯物、せきやくしゃみなどでは感染しません。HIVの主な感染経路は、性行為、血液を介した感染、母子感染です。そのため、家族と生活空間や食器を分ける必要はありません。

HIVの検査や治療には、どのくらいの費用がかかりますか?

HIV感染症の診療や抗HIV薬には健康保険が適用されます。また、一定の認定基準を満たす場合は、身体障害者手帳や自立支援医療制度などを利用して、治療費の自己負担を軽減できる可能性があります。利用できる制度や負担額は所得や自治体によって異なるため、受診先の医療ソーシャルワーカーに相談しましょう。

HIV陽性でも妊娠や出産はできますか?

HIV陽性でも、専門医の管理のもとで妊娠・出産を目指すことは可能です。妊娠中に抗HIV治療を行い、ウイルス量を十分に抑えたうえで、適切な分娩・出生後の管理を行うことが重要です。適切な母子感染対策によって、赤ちゃんへの感染リスクは0.5%未満まで低下させられるとされています。

まとめ|HIV陽性と言われたら、検査の種類を確認して専門医療機関につながりましょう

HIV陽性と言われても、スクリーニング検査が陽性だっただけでは感染が確定していない場合があります。まずは、受けた検査の種類と、確認検査まで実施されているかを確認しましょう。感染が確定した場合は、エイズ診療拠点病院やHIV専門外来を早めに受診します。

現在は、抗HIV薬を適切に続けることで、ウイルス量を抑えながら長期的に健康な生活を送ることが可能です。不安を一人で抱え込まず、検査を受けた施設や専門医療機関に相談し、必要な検査と治療につなげることが大切です。自己判断で受診や治療を中断しないようにしましょう。

記事監修:島田航 泌尿器科専門医

2018年東京科学大学(旧東京医科歯科大学)医学部を卒業後、東京科学大学、JAとりで総合医療センター、土浦協同病院、神栖済生会病院にて泌尿器科を歴任。性感染症外来・泌尿器科外来に従事。

所属学会:日本泌尿器科学会/日本生殖医学会/日本泌尿器内視鏡ロボティクス学会/日本産業衛生学会

▪️参考文献

1)Nasrullah M, Wesolowski LG, Meyer WA 3rd, et al. Performance of a fourth-generation HIV screening assay and an alternative HIV diagnostic testing algorithm. AIDS. 2013;27(5):731-737.

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